人形

 人形って怖いんです。
 昔、プラモデル・マニアだった私は一体たりとも、人形を作っていません。
 主に船舶・航空関係を作っていた私は当然の事ながら、航空機のパイロットを作るのが普通です。
 (船舶関係はスケールの関係で作りませんでした。1/700で2@ぐらいですから)
 でも、その私は人形を作りませんでした。怖いんです。
 キャラクター・フィギュアも作った事も買ったこともありません。
 その私が、選んだ「人形」テーマの本を・・・

『ヴァンデミエールの翼』全2巻 鬼頭莫弘著 講談社アフタヌーンKC
 「人間ののがい物」「天使のまがい物」「機械のまがい物」それが自分を指して言った言葉。魂を持った自動人形ヴァンデミエールと人間の心の交流を描いたコミック。19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパ風世界を舞台に魂を持った自動調律人形が動いた時に事件は起こる。
 美しく、かわいい人形が放つ言葉は見た目に似合わぬくらい鋭く怖い。でも読み終われば心が温かくなる、不思議な本です。
 絵のタッチも柔らかいし、出てくるメカニズムの描き込みも良くできている(この作家の特徴)。お勧めです。
 
『ムットーニの不思議人形館』ムットーニ作 北原照久コレクション 荒俣宏監修 清水行雄写真 工作舎
『ムットーニ・カフェ』ムットーニ作 工作舎

 ムットーニこと武藤政彦が作り上げたオートマタ(電動からくり人形)の写真集。独特な雰囲気、独特な世界観。暗い明かりに照らされた人形たち。でも、何となく、いい感じの本。第2作は少し明るめの出来ばえ。
 人形が怖い私が「実物を見てみたい」と私が思う数少ない人形たち。
 
『平城京展‐再現された奈良の都』京都国立博物館
 私の人形恐怖を決定づけた人形があった展覧会のパンフレット。
 何か空気が違っていた。歴史好きの私が平城京の発掘物の展覧会を見に行ったときだった。
 その人形(この場合「ひとがた」と読んでください)がある展示室に近づいた瞬間、恐怖を感じた。
 その人形があることは知らなかった。でも・・背筋に何かが走った。
 その人形があった。
 展示品名「のろいの人がた」。
 木簡の一部、人の顔と胴体のみが残っているだけの木簡。でも心臓の部分に何かを刺した跡。
 漂う空気が違う。パンフレットの写真では何も感じないが実物は・・・。
 しばらく見入られた後、私は立ち去った。霊感など無い私にこれだけの恐怖を感じさせる人形。
 これ以来、人形恐怖は増幅されました。

『太陽1999年8月号宸S66特集「人形愛」』平凡社
 いきなり四谷シモンの少女人形。
 ベルナール・ファルコンの人形写真。
 辻井ジュサブロー/四谷シモン/土井典/与勇輝/ムットーニ/石塚公昭/岩井天志の作品。
 種村季弘と合田佐和子の対談。
 からくり人形からマネキン、ドール・コミックまで人形愛の絶好の入門書。

『is〔56〕人形愛』ポーラ文化研究所
 上記『太陽』と同様「人形愛」の特集号。ピュグマリオニズムについての文章いっぱい。
 特に「カタン・アマノ」こと天野可淡の人形の怖いこと、特に「目」の怖さ。
 「PLAYMATE−フィティッシュ・ドールたち」も良い文章です。プレイメイトとマネキンの関係についての良文。
 内容の非常に濃い本です。

『観用少女(プランツ・ドール)』川原由美子著 朝日ソノラマ
 全4巻。
 あらすじ・・・この世のものとは思われぬ美しさを持った観用少女は一日三回のミルクと週に一度の砂糖菓子で生き続けるプランツ・ドール(生き人形)。その笑顔は何物にも変えられない程の幸福感を持ち主に与えます、しかし、そのためには彼女たちには無償の愛を与え続けなければならないのです。彼女たちの涙は「天国の涙」と呼ばれ人形本体よりも高く取り引きされるのです。
 その観用少女をめぐるオムニバス型式のコミックです。
 美しくて、はかなくて、時にはコミカルなストーリーはいろいろな事を考えさせてくれます。絵もきれいですのでオススメです。
 こんな人形なら怖くないですね、私にでも。
 (01.01.19新規)

『球体関節人形‐与偶の世界』平賀正明撮影 季刊『S』2003年冬号掲載 STYLE
 生人形です、球体関節人形です・・・人形作家・与偶のインタビュー。
 人形の視線が結構、怖いです。女の子の人形なんですけど・・・でも、インタビューを読むと納得してしまうのが不思議。
 色々複雑な環境を生きてこられたようで・・・凄いです。自分の人形に自分の毛を植えたりして・・・凄いです。
 ちなみに作者近影を見ると、作者の人形のような雰囲気を出しています(こっちは怖くありません)。
 (03.02.09新規)

『人形作家』四谷シモン著 講談社現代新書
 独特な人形を作り上げ、人気の人形作家「四谷シモン」の自伝書。
 不良少年からロカビリー歌手、唐十郎の「状況劇場」役者、アングラ芸術運動家と歩んだ後に人形作家として有名になった筆者の歩んだ道を自ら語る、そこには多くの人との出会いがあり、底流には「人形作りへの夢」が流れていることが判ります。
 筆者の人形の写真も多数掲載されています・・・やっぱり、この人の作品は独特ですよね・・・故澁澤龍彦が愛した理由も判るような気がします。
 (04.05.11新規)

 怖い怖いと言いながら結構、人形の本を読んでる自分に気付く。怖い物見たさ?本当は好き?
 謎にしておきましょう、自分でもわからないから。

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