『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー著 平井呈一訳 創元推理文庫
基本です。世の中に吸血鬼を知らしめた作品。吸血鬼作品には、それ以前にも『吸血鬼カーミラ』レ・ファニュ著や『吸血鬼』ジョン・ポリドリ著などがありますが、やはりこの作品でしょう。
人の血をすするため英国に上陸したドラキュラ伯爵、その術中にはまるジョナサン・ハーカー。後は皆さん、ご存じのとおり・・・本当に基本です。
『ドラキュラドラキュラ‐吸血鬼小説集』種村季弘著 河出文庫
古典的な吸血鬼小説のアンソロジーです。古典的な小説を読むならば、まずこの一冊から始めましょう。ちなみに収録作品を列記しておきます。
『吸血鬼』ジャン・ミストレル著 種村季弘訳
『グラス(抄)』プロスペル・メリメ著 根津憲三訳
『吸血鬼』ジョン・ポリドリ著 佐藤春夫訳
『吸血鬼の女』E・Th・A・ホフマン著 種村季弘訳
『カルパチアの城』ジュール・ヴェルグ著 安東次男訳
『吸血鬼』マルセル・シュオップ著 種村季弘訳
『サセックスの吸血鬼』コナン・ドイル著 延原謙訳
『吸血鬼』ルイージ・カプアーナ著 種村季弘訳
『吸血鬼を救いにいこう』ベレン著 種村季弘/橋本綱訳
『受身の吸血鬼』ジェラシム・ルカ著 種村季弘/橋本綱訳
『ドラキュラ ドラキュラ』H・C・アルトマン著 種村季弘訳
結構、有名な人が吸血鬼小説を書いているのがわかりますね。面白いかどうかは別にして・・・、それは個人の意見ですから。
『血と薔薇のエクスタシー‐吸血鬼小説傑作集』幻想文学出版局
今度は現代日本人作家による吸血鬼アンソロジー。こちらも蒼々たるメンバーによるアンソロジーです。
『仲間』三島由紀夫著
『ヴァンピールの会』倉橋由美子著
『陰の狩人』中井英夫著
『森の彼方の地』須永朝彦著
『蝙蝠−「ドラキュラ三話」より』岡部道男著
『吸血鬼の静かな眠り』赤川次郎著
『週に一度のお食事を』新井素子著
『メイク・アップ・ストーリー』菊池秀行著
『吸血鬼』中河興一著
『女優』日陰丈吉著
『抑制心』星新一著
『黄色い吸血鬼』戸川昌子著
『ちのみごぞうし』岸田理生著
『一本足の女』岡本綺道著
『夜あけの吸血鬼』都筑道夫著
『吸血鬼入門』種村季弘著
三島由紀夫から赤川次郎まで、これだけの人が吸血鬼小説を書いているすごさ。この一冊から、お気に入りの作者を発見するのも、良いでしょう。それぞれの解説を書いてたら大変なので省略させていただきます。
それでは、もう一冊、吸血鬼アンソロジーを
『血‐Blood』早川書房
全編書き下ろしのアンソロジーです。
『13』大原まり子著
『かけがいのない存在』菊池秀行著
『薔薇船』小池真理子著
『エステルハージ・ケラー』佐藤亜紀著
『アッシュ‐Asbes』佐藤嗣麻子著
『一番抵当権』篠田節子著
『スティンガー』手塚眞著
『血吸い女房』夢枕獏著
現代を代表する8人の幻想文学作家が書き下ろした贅沢なアンソロジーです。
個人的には『かけがいのない存在』『一番抵当権』なんかが好きです。『一番抵当権』は吸血鬼小説に分類していいのか迷いますが小説としては大変素晴らしい作品だと思います。
『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン著 梶本靖子訳 創元推理文庫
もし、ドラキュラ伯爵がヴァル・ヘンシングに敗れなかったら?もし、そのドラキュラが時のビクトリア女王と結婚し英国を治めたとしたら?もし、その事件下で「切り裂きジャック」事件が発生してたら・・・。考えただけでわくわくする設定で始まる物語。虚構と史実が絶妙に混合され話は展開していく。『吸血鬼ドラキュラ』の正統な続編と言える名作。よく、ここまで事実とシンクロさせたと思う、読んでいてノンフィクションとの境界が怪しくなる程の作品。
『ドラキュラ戦記』キム・ニューマン著 梶本靖子訳 創元推理文庫
『ドラキュラ起源』の続編です。『ドラキュラ起源』で英国を追われたドラキュラ伯爵はドイツで報復を始めた。
第一次世界大戦下で猛威を振るうリヒト・フォーフェン率いる航空隊、その正体は吸血鬼であった。祖国を捨てたエドガー・ポーは彼の伝記を書くため航空隊の基地におもむいた。
もう一つの第一次世界大戦が、今ここに始まる。虚と実が見事に混然した世界の中で吸血鬼たちはどう動いたのであろうか?恐怖と血の物語の続編がここに開幕する。(02.01.08新規)
『ドラキュラ崩御』キム・ニューマン著 梶本靖子訳 創元推理文庫
キム・ニューマンの「ドラキュラ」シリーズの第3弾であり完結編。
1959年ドラキュラ成婚に沸くローマが舞台。吸血鬼そして吸血鬼を狙う一団、そして「深紅の処刑人」と呼ばれる謎の人物、太古からドラキュラと対峙する「涙の母」・・・現実の人物、他の作品の登場人物・・・虚々実々の物語が展開していく。ドラキュラ本人は殆ど登場しないで進む物語。幻想の年代記であります。
(04.02.02新規)
『渇きの女王‐ヴァンパイア奇譚』トム・ホランド著 奥村章子訳 ハヤカワ文庫
吸血鬼伝説はヨーロッパだけでない。主人公の医師エリオットはインド国境で恐怖体験をする。そしてイギリスに帰国した彼に悪夢がつきまとう。そして彼は真相を探るためにブラム・ストーカーと知り合う。ビクトリア朝ロンドンを跋扈する吸血鬼の正体をめぐる戦いは始まったのだ。
そして、もう一つの謎の事件にもリンクしていくところが、良い。
読み応え十分のホラー小説。
『ライヴ・ガールズ』レイ・ガートン著 風間賢二訳 文春文庫
新感覚の吸血鬼小説。悪趣味文化を詰め込んだ小説であります。
舞台はニューヨークの歓楽街タイムズスクエア、場末の覗き部屋。その店を訪れた男たちは次々に悪鬼に変身していく。
主人公もその一人だった・・・彼もまた犠牲者となるのか?。
とにかく悪夢的表現に満ちあふれたホラー小説であります。
(03.11.12新規)
『ヴァンパイア・ジャンクション』S・P・ソムトウ著 金子浩訳 創元推理文庫
タイ人作家S・P・ソムトウが書いた小説です。
天使のような声で歌う12歳の美少年ティミー・ヴァレンタインは『ヴァンパイア・ジャンクション』を歌い世界中のティーンエイジャーを虜にしていた・・・しかし、彼には秘密があったのだ・・・2000年の時を旅し血を欲し続けた永遠の少年と不思議な因縁で結びついた人々、そして吸血鬼を狩る人々との戦いをつづった長編小説。
時間の超越が新鮮な吸血鬼小説であります。
(04.01.03新規)
『ミッドナイトブルー』
『ゴースト・トラップ』
『フォーリング・エンジェル』
『ブラック・ローズ』ナンシー・A・コリンズ著 幹遙子訳 ハヤカワ文庫
Tシャツに黒い革ジャン、美しい顔、瞳を常に隠すミラータイプのサングラス、懐に銀のナイフを忍ばせる女、その吸血鬼の名はソーニャ・ブルー・・・彼女の目には人の目には見えない「真世界」が見えるのだ、彼女の親であるモーガンを殺すべく戦いが続く・・・彼女は吸血鬼の天敵である「銀」が通じないのだ。そして彼女の中には、もう一人の人格「彼女」が潜んでいる。
とてもスリリングな展開とソーニャ・ブルーの格好の良さが引き立つ作品。三部作+外伝一冊であります。退廃と格好の良さの同居に心奪われる作品。
(04.02.18新規)
『吸血鬼エフェメラ』大原まり子著 ハヤカワ文庫
こちらは、全く吸血鬼をドラキュラと別解釈した作品。吸血鬼の特徴の一つである不老不死、年を取らない謎を「ダブルハート」という解釈によって解決した作品。「ダブルハート」?それを書いたら、面白くなくなりますから。
大原まり子独特の文体とメンタル・フィメールな物語の組立がさらに、作品を深めています。
『はじらい吸血鬼(ヴァンパイア)』睦月影郎 双葉文庫
はっきり言ってエロティック小説です。アパートで独り暮らしていた、まるっきりもてない大学生・石原孝司は近所で見かける美少女に淡い恋心を抱いていた・・・ところがある日、その美少女・加納安奈の方から声をかけてきた。その彼女が彼のアパートにやってくる・・・石原は「もう、こんな事はない」と思い隠しビデオをセット・・・彼女が帰った後、ビデオを再生すると映ってないのだ、そう彼女は吸血鬼だったから・・・。彼女と体験してから男の人生は180度変わってしまう、女性にもてるようになってしまうのだ・・・そこからはエロティック小説と言うことで・・・想像にお任せします、期待は裏切りません。
(07.01.08新規)
『吸血蟲』北上秋彦 角川ホラー文庫
突然の弟のメールに不信感を懐いて郷里を訪ねて異様な空気を感じた臨床検査技師・亜希子、突然連絡を絶った姉を捜して村にやってきた警察官・触沢、台風19号によって孤立した村で異様な化け物に家族を奪われ恐怖から逃げまどう少女、この村には戦争中の悪夢の遺物がまだ残っていたのだ・・・異形に追いつめられていく人々の恐怖を描いた作品。
この作品のポイントは吸血鬼の新しい解釈、こういうパターンもありかと感じさせてくれます(吸血鬼の正体は何かはネタバレになるので書きませんが意表をつくものです)。人々の恐怖感覚(雨の恐怖や湿度の高そうな「ねっとり」感覚)が実に良く書かれています。
(08.01.07新規)
『BLOOD THE LAST VAMPIRE』北久保弘之監督
映画です。フルデジタル・アニメーションです。
あらすじ・・・1966年秋ベトナム戦争中の在日米軍基地の周辺では不可解な自殺が相次いでいた。その中で日本刀を持つ一人の少女「小夜」が地下鉄で吸血鬼「翼手」を斬る。そして、彼女は横田基地のハイスクールに忍び込んだ・・・。
全体的に暗い画面、少ない台詞、飛び散る血、セーラー服と日本刀のアンバランス・・・どれをとっても吸血鬼作品の王道を行く作品であると言えるだろう。48分の作品であるが中身が詰まった作品である。
(01.05.12新規)
劇場公開バージョン『バンパイアハンターD』菊池秀行原作・川尻善昭監督
こちらも映画であります。
菊池秀行原作『バンパイアー・ハンター“D”シリーズ(3)D‐妖殺行』を完全映像化した作品。原作のイラストでおなじみの天野善行の絵がフル・アニメーションで動くのです。
あらすじを極めて簡単に説明すると、今から遠い未来、貴族と人間の混血であるダンピールであるDが貴族と言われる吸血鬼を狩る話。
ゴシック調の画像が印象的な作品。台詞も全編、英語(日本語字幕)なところがかえって雰囲気が出てて良いです。
予想外にきちんとした作品であります。
(02.01.28新規)
それではノンフィクションについての本を解説しましょう。
「吸血鬼にノンフィクションがあるか?吸血鬼って架空の話それとも伝説でしょ」って声が聞こえてきそうですが実は・・・。幾つかのパターンがありますので解説しましょう。
1.吸血鬼についての、まじめな民俗学的な研究書や吸血鬼についての解説書。
2.吸血鬼ドラキュラのモデルとなったという「串刺し王ヴラド・ツェペシュ」の本。
3.自らを吸血鬼と思い込んでしまった人々の話。
4.本当に吸血鬼はいた。
1.について、まずは基本中の基本の一冊
『吸血鬼幻想』種村季弘著 河出文庫
基本の本です。この本を読めば吸血鬼の基本的知識が身につきます。
吸血鬼の系譜・吸血鬼論争・吸血鬼百科・大吸血鬼の肖像・吸血鬼のエロチシズム・吸血鬼小説考・吸血鬼詩アンソロジー・生きている吸血鬼・吸血鬼の画廊などなど・・・目次の見出しから抜粋はこれだけあるのですから。
ジル・ド・レやバードリ・エルジェベトやジョン・ヘイの話も載っていますので。
『スラヴ吸血鬼伝説考』栗林成郎著 河出書房新社
『吸血鬼伝説』栗林成郎著 河出文庫
こちらは東欧スラヴ民族の吸血鬼伝説についての研究書。「吸血鬼ドラキュラ」が書かれるはるか昔から東欧スラヴ民族には吸血鬼伝説がありました。他にも夢魔や死神・人狼についても多くの伝説があります。それを一冊にまとめたのが、この本です。西欧とは違う吸血鬼感に注目しましょう。
ちなみに、上の両書の内容は同じですのでご注意を(文庫化にあたって題名変更)。
他にも吸血鬼研究書は多数あるのでご紹介していきましょう。
『吸血鬼』吉田八岑著 北宋社
世界中の吸血鬼伝説の解説書。吸血鬼伝説は世界中に存在していることを教えてくれる本。
『ヴァンパイアと屍体‐死と埋葬のフォークロア』ポール・バーバー著 野村美紀子訳 工作舎
吸血鬼伝説と屍体の腐敗課程を結び付けた画期的な研究書。吸血鬼とは異常な腐敗課程をたどった屍体であるとしたところが斬新。
『神々と吸血鬼‐民俗学のフィールドから』ナタン・ワシュテル著 齋藤晃訳 岩波書店
南米アンデス地方の吸血鬼強迫観念についてのフィールド・ワーク。近代文明が吸血鬼の観念を変質させ事件まで起こしてしまう事実。
『ドラキュラ学入門』吉田八岑・遠藤紀勝著 現代教養文庫
吸血鬼に関する全ての事項に関する入門書。民俗学的な物と吸血鬼文学・映画の両方を取り上げてます。
『吸血鬼の事典』マシュー・バンソン著 松田和也訳 青土社
世界各国の民俗伝承から英が・演劇・文学にいたる吸血鬼に関する情報を網羅した本。
但し、日本関係については?が付くのが残念。
『吸血鬼ゴケミドロ』は載っているのに『ボーの一族』が載ってないのは疑問符?。
『ドラキュラ誕生』仁賀克雄著 講談社現代新書
吸血鬼の起源・世界の吸血鬼・有名な吸血鬼・吸血鬼文学の歴史・ドラキュラ公ヴラド・ツェペシュ・『ドラキュラ』を書いた男・ドラキュラの末裔・吸血鬼の幻想といった内容の本。古今東西フィクション・ノンフィクション両者を適当なバランスを持って解説した良著です・・・現在のなかでは入門書として適当です。
『吸血鬼伝承‐「生ける死体」の民俗学』平賀英一郎著 中公新書
プラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』以前の東欧における吸血鬼伝説(魔女・人狼・夢魔などを含む)=「生ける死体」の伝承を読み解く一冊。東欧から中東に至るまで各民族ごとの伝説を丁寧に解説してあります(東欧圏民族案内としても読めます)。柳田国男的語源分析を吸血鬼伝説に取り入れたところも珍しい一冊です。(03.08.30新規)
『ヒメの民俗学』から『女と妖怪』宮田登 ちくま学芸文庫
日本における吸血鬼伝説について語られた貴重な一文。山女・磯女・雪女のいずれもが吸血行為をするという伝説が残っている。山女が笑うと血を吸い、磯女は蟹の化身で人の生き血を吸い、雪女は人間の生気を吸うという伝説が残っている・・・その真相を民俗学的に切り込んでいく一文(03.09.07新規)
『吸血妖魅考』モンタギュー・サマーズ/日夏耿之介著 ちくま学芸文庫
吸血鬼民俗学考察の古典的名著。古くはギリシャ・ローマ時代から19世紀まで、地域的には世界中をほぼ網羅している作品であります。この著作に影響を受けた吸血鬼作品も多い。ただし作品が古いので地名等が漢字表示が多く慣れるまで読みにくいのが難点であります。(04.08.25新規)
今度は吸血鬼文学論の本について・・・
『別冊幻想文学「ドラキュラ文学館‐吸血鬼小説大全』 幻想文学出版局
大全の名に恥じない内容の一冊。元々『幻想文学』自体がこの手の本の総本山的な雑誌ですので安心して読めます。
菊池秀行と須永朝彦の対談・ドイツ吸血鬼文学誌・フランス吸血鬼文学誌・モダンホラーの吸血鬼・スラヴ吸血鬼文学誌・日本吸血鬼文学誌・吸血鬼映画・吸血鬼コミック・世界吸血鬼名鑑などなど、ぎっしり詰まっています。
短編の吸血鬼小説も掲載されています。
出版が1993年であること以外に問題点は無いと思われる一冊です。
(01.04.07新規)
『ヴァンパイア・コレクション』ピーター・ヘイニング編 風間賢二他訳 角川文庫
古典から現代までの吸血鬼小説のコレクション。
レイ・ブラッドベリ、ロジャー・ゼラズニイ、アン・ライスなどの有名作家作品も掲載されていますが貴重なのは古典的な作品が幾つか掲載されていることです。ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』以前の吸血鬼小説が幾つか掲載されています(作品として面白いかは別問題です)。
同時にウッディ・アレンの吸血鬼小説『ドラキュラ伯爵』が掲載されているのも貴重。
最も貴重なのは編者が作品ごとに書いている解説です。これが一番価値があります。
(02.04.23新規)
『ドラキュラ‐100年の幻想』平松洋著 東京書籍
ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の研究書であります。
ドラキュラの謎の数々について哲学・民俗学・心理学・歴史学を駆使して解き明かす一冊。
「ドラキュラは何故十字架を嫌うのか?」「ドラキュラは何故鏡に映らないのか?」「ドラキュラは何故ニンニクを嫌うのか?」「ドラキュラは何故伯爵なのか?」・・・、そして『吸血鬼ドラキュラ』が書き上げられていく過程を解き明かします。
多少(というよりかなり強引)なこじつけで解き明かしていきますが、知的な冒険と考えれば許せる範囲でしょう・・・。
書き出しがフィクションの型式を取っているので戸惑いますが読み応えはある本です。かなりの手間はかかりますが・・・お勧めです。
(03.05.18新規)
『ドラキュラの世紀末‐ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究』丹治愛著 東京大学出版会
プラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の書かれた時代背景について分析した本であります。その背後には栄華を誇っていたビクトリア朝が、その裏に各種の恐怖を抱えていたという事実を分析しています。フランス・ドイツに対する恐怖、新興国アメリカへの恐怖、ユダヤ人への恐怖、混血への恐怖、最近に対する恐怖・・・全てが『吸血鬼ドラキュラ』に込められているという。ビクトリア朝時代のイギリスの断面を知るための良書です。
(04.06.09新規)
『中欧怪奇紀行』田中芳樹・赤城毅著 講談社文庫
田中芳樹と赤城毅の対談と各々の短編小説で構成された1冊。中欧、特にドイツを中心として怪奇譚について語り合っています。ロリコンだった吸血鬼、狼男の二つの系統、頭が良かったフランケンシュタイン・・・神話・伝説・物語・歴史・紀行を織り交ぜて話は止めどなく進みます。吸血鬼については、それほど論じてませんが面白い話が多いです。赤城毅作の『ヨハネス・マイヤヘホーフの手記』は吸血鬼ものです。
(04.10.02新規)
『妖精のアイルランド‐「取り替え子」の文学史』下楠昌哉著 平凡社新書
アイルランドは何故「ケルトと妖精の島」と呼ばれるのか?「取り替え子」の伝承を信じる人がいるのか?伝承を信じて19世紀になっても妻を焼き殺す事件が発生したか?19世紀から現代に至るまでの文学を読み解くことによってアイルランドの妖精を読み解く斬新な試みの1冊。『ドラキュラ』の作者プラム・ストーカーがW・B・イエンツやオスカー・ワイルド、ラフカディオ・ハーン、ジェームズ・ジョイスなどと同じようにアイルランド伝承の影響を受けていることを読み解いている(『ドラキュラ』の風景描写がアイルランドの風景に非常に似ていることなど・・・)。
2.吸血鬼ドラキュラのモデルとなったという「串刺し王ヴラド・ツェペシュ」の本。
吸血鬼ドラキュラのモデルになったのは中欧トランシルヴァニアのワラキア公国の王ヴラド・ツェペシュ、別名「串刺し王」であることは有名な話。しかし、その串刺し王と呼ばれような残酷性のみが強調されています。
でも、その真実を知る人は少ないでしょう。
彼が、串刺し王と呼ばれるまで残酷になる必要があったか考えなければ、なりません。それでは、そのための何冊かを紹介しましょう。
『叢書中世異端のコスモロジー「《ドラキュラ公》ヴラド・ツェペシュ」』清水正晴著 現代書館
今、一番ヴラド・ツェペシュについて、最も詳しく書かれた書物と思います。彼の生誕から死亡まで、彼の生きた時代背景まで丹念に調べあげられています。
彼は、串刺し王として生きることが自らの領地を守るための手段であったことが理解できると思います。
『ドラキュラ公‐ヴラド・ツェペシュの肖像』篠田真由美著 講談社
こちらは、読みやすく小説風に書かれた書物。内容的にはまったく問題なし。上記の本よりも読みやすいです。
『世界・わが心の旅 トランシルヴァニア吸血鬼幻想』菊池秀行著 NHK出版
ドラキュラの故郷トランシルヴァニアを熱狂的吸血鬼マニア菊池秀行がルポする旅行記。作者の思い入れを感じる一冊です。
『新ヨーロッパ・イラスト紀行(2)ヴァンパイアラプソディー‐ウィーン、プラハ、ブタペスト&トランシルヴァニア』ひらいたこ・磯田和一著&イラスト 東京創元社
2人のイラストレーターが中欧そして東欧を巡り歩いた紀行文(というよりイラスト集)。インスブルック、ザルツブルク、ウィーン、プラハ、ブタペスト、トランシルヴァニアと巡っておりますが、ページの半分はトランシルヴァニア(即ちドラキュラの故郷です)であります。目の付け方が面白いです、特に食べ物に関しては情報豊富、旅でのトラブル(詐欺等)もきちんと対処法が載っているのも親切・・・実際に行く人も私のように行かない人にも楽しめる1冊であります。
(04.09.08新規)
3.自らを吸血鬼と思い込んでしまった人々の話。
これだけ、世界中に吸血鬼伝説があり、映画・文学・漫画・アニメが世の中にあふれてしまえば、自らを吸血鬼と思い込む人々が出現しても、おかしくないでしょう。
そして、これだけカルト宗教が広まってしまえば・・・と、なってしまいます。
『真実のバンパイア 現代の吸血鬼たちの記録、衝撃のファイル公開』スティーブン・カプラン著 宇佐和通訳 廣済堂
バンパイア・リサーチセンター所長の筆者が記録した真実のバンパイアの記録。それも現代です。
自らを吸血鬼だと言い、棺の中で眠る人。
吸血鬼に襲われた人々の証言。
圧巻は自称エリザベス439歳の吸血鬼の記録。
怪しいといえば絶対に怪しい話。でも、どこか引かれてしまうのは何故。
それが、吸血鬼の魅力でしょう。
最後に「4.本当に吸血鬼はいた」ですけど本はありません。但し、一枚の新聞記事が私の手元にあるのです。
それについて解説しましょう。
1988年2月5日毎日新聞『「吸血鬼」ががん治す?!新薬をめざしカナダで研究』という記事です。要約しましょう。
「ブリティッシュコロンビア大のデービッド・ドルフィンによると、ポルフィリンの代謝異常が起こると、ポルフィリンが皮膚の下に蓄積され、一定の波長にさらされると触媒となって活性酵素が発生、それが周りの細胞を破壊するため指や足先が欠けたり、多毛症になる。これがすなわち狼男の初期症状。
また、ポルフィリンの代謝異常症をポルフィリン症と呼ぶが、その治療にはヘムの注射が有効なことから吸血鬼と言われる人々は、血を飲むことで症状を和らげようとしたのではないかと推定している・・・以下、略」
あり得ない話ではないでしょうか。本能的に病気を治すために血を欲する人々がいたとして不思議ではないでしょうか。
ところで皆さんは首から血を抜かれた経験があるでしょうか?
私は、あるんです。
首に鬱血があったので鍼灸院で瀉血をしてもらいました。首に針を刺され血を抜かれる感覚って独特ですよ。
結構、怖かったです。