江戸


 江戸といえば・・・今回は名前が浮かばない。
 でも、皆さんが考えている江戸のイメージって、どんな感じですか?
 飢饉・百姓一揆・身分差別・キリシタン弾圧・賄賂政治・鎖国etc.・・・いいイメージないでしょ?
 何故、なら江戸幕府が何故300年弱続いたのでしょう?
 何故、落語の「熊さん」「八さん」は楽しそうに生活してるのでしょう?。
 何故、明治維新は成功したのでしょう。あの時、あれだけの人材を排出、出来たのでしょう?。
 何故、日本は欧米の植民地にならずにすんだのでしょう?。
 今回は、その回答の一部となる本を紹介しませう。

『大江戸事情シリーズ』石川英輔 講談社文庫
 このシリーズの内容は『大江戸えねるぎー事情』『大江戸テクノロジー事情』『大江戸生活事情』『大江戸リサイクル事情』『大江戸庶民事情』(以下続刊がでるかも・・・)から、なっています。
 この中から一冊と言われれば個人的には『大江戸生活事情』がお勧めです。基本的には江戸時代の市民生活の実態を多くの史料に基づいて、わかりやすく書いた本です。
 例えば江戸と言えば飢饉が思いつきますが、同時代には他の国でも飢饉が起こってます。それを比較するだけでわかってもらえるでしょう。
 日本最大の飢饉は「天明の飢饉」です。人口3000万強のうち50万人が餓死しています。ショッキングな数ですね。でもヨーロッパでは同時期に「ジャガイモ飢饉」がありました。この時アイルランドでは人口820万人のうち100万人が餓死しています。ヨーロッパでは、緯度も高いせいもあり、このクラスの飢饉がしょっちゅうあった様です。(仏人の研究家が来日して餓死者の少なさにカルチャー・ショックを受けた様です)。ちなみに日本の50万人の餓死者は各藩からの報告の総計で、各藩とも水増し報告していたようです。(過去帳の調査をすると死者の数はもっと少ないことが最近の文献研究でわかってきています)
 こんな、話が各巻にたくさん載っています。
 目から「うろこ」がボロボロ落ちていく感じがわかるぐらい。
 ただ、文章が多少くどいのが玉に傷ですが・・・。現代文明批判がちょっと・・・それより情報を、って感じです。
『大江戸ボランティア事情』石川英輔・田中優子著 講談社文庫
 石川英輔著の大江戸シリーズ第6弾は江戸のボランティア事情を田中優子と一緒に語ります。「長屋暮らし」「お師匠さまの学校」「火消しと町の暮らし」「旅はなさけ」「村の民主主義」「大家さんは大忙し」「連は楽しいからみ合い」「ご隠居さんの活躍」と江戸時代庶民の「おたがいさま社会」を豊かに描いています。
 江戸時代は「おたがいさま」が町や村の隅々まで行き渡った、でなければ成り立たないほどの社会だったのです。極端に少ない役人の数で社会を成立するには、これがなければならなかったのです。相互干渉主義とも言える社会ですが、これが高度に発達すれば、それなりに上手く回り出すのです、それは江戸時代約300年の歴史が証明してくれるのです。それが、この本なのです。
 (02.11.17新規)
『大江戸生活体験事情』石川英輔・田中優子著 講談社文庫
 江戸時代の消費エネルギーは現在の1/100で済んだと言われています。それを実証すべく筆者の2人が実際に江戸時代の生活を体験してみました・・・太陰暦・旧暦・火打ち石・行灯・書道・着物暮らし・木製品・下駄など・・・確かに現代の生活には不適合、でも当時の環境では快適だったのでは・・・作者達の結論です。現代のエネルギー大量消費社会に警鐘を鳴らす一冊です。
 (04.07.29新規)
『大江戸えころじー事情』石川英輔著 講談社文庫
 現代の大量消費大量廃棄社会と違った江戸時代は完成したエコロジー社会でありました。ほとんどを太陽と植物エネルギーに依存し徹底したリサイクルを実施した社会・・・それは人力と手間と知識を惜しげもなく使い不便さを不便とも思わないで、のんびりと暮らした社会でありました。その実態を道路・森林・米・錦絵・着物・生き様・歩行などを例にとって解説しています。現代社会への警鐘であり、見習う所が多いことを示してくれる1冊です。ただし現代文明批判(特にインターネット社会批判)がひつこすぎるのが読んでいて残念であります。
 (04.10.02新規)
『大江戸番付事情』石川英輔著 講談社文庫
 江戸時代から日本人はランキングマニアでありました、と言っても当時のランキングの付け方は現在と違って相撲の番付方式でありました。料理店に始まって米・酒・おかずの食品類、職人・名刀・自信・山・橋・名所旧跡・温泉・神社仏閣・祭・物産・祭・遊女といった今でもありそうな番付、娘・奉公人・女房・嘘・いらないもの・みにくいもの・大きなもの・小さなもの・酒合戦といった半分シャレで作ったようなものなど種類は様々・・・でも見ていくと現在に通じるものがあったり、皮肉が効いてたり、江戸時代の人々のユーモアを知ることが出来る1冊であります。
 (05.02.04新規)
『大江戸庶民いろいろ事情』石川英輔著 講談社文庫
 大江戸シリーズ第10弾。今回も江戸の色々な事情を解説。ファッション(はやり廃りが結構ありました)・おかず(今の庶民の和食と変わりません)・ウナギ屋・遊芸・出版事情・拳・川柳・結婚・農地・木戸(木戸と言っても実際は門柱だけで扉が閉じられることは、ほとんど無かった)・エネルギー問題・飲み水(江戸の水道整備は世界一だった)・言語について言及しています。ただし序文の現代文明批判は多少ひつこいので読み飛ばすのも良いかも。
 (05.04.03新規)
『大江戸開府四百年事情』石川英輔 講談社文庫
 大江戸シリーズ。今回のメインテーマは江戸時代は何故265年続いたか?何故、市民革命などが起こらなかったか?であります。江戸が世界最大の都市ながら少ない役人と警察機構(奉行所)で治安が保てたか、本当に税金は高かったのか(実は高くない)、本当に一揆は続発したのか(実はほとんど起こっていない、起こったとしても筵旗を上げて大騒ぎではなく逃走が多かった)多くの疑問を豊富な資料と当時のヨーロッパの比較で検証しております。当時の丁稚さんが数十両のお金を持ってお使いに行って、途中でお金をその辺に置いて遊んでいても取られることもなく、御店に帰っても怒られることもなく(番頭さんも手代さんも丁稚の時は、そうやってさぼっていた)過ごせたというのが象徴的な出来事として語られています・・・江戸って平和でのんびりしていて、まったり経済成長していた社会であることを判らしてくれる1冊です。
 (07.02.04新規)

 『新書・江戸時代シリーズ』講談社現代新書全5巻
 〔1〕将軍と側用人の政治 大石慎三郎
 〔2〕身分差別社会の真実 斎藤洋一・大石慎三郎
 〔3〕貧農史観を見直す 佐藤常雄・大石慎三郎
 〔4〕鎖国‐ゆるやかな情報革命 市村佑一・大石慎三郎
 〔5〕流通列島の誕生 林玲子・大石慎三郎

 以上の5冊組です。上の『大江戸事情シリーズ』を読んで江戸をもっと知りたい!と思った人にお勧めします。明治以降の教育は過去を否定することで自らを正当化しました。その影響が前書きの江戸観になった理由だと思います。ちゃんと文献や事実を調べてみれば江戸の見方は変わります。(ちょっと過激な意見)

『三くだり半と縁切り寺‐江戸の離婚を読みなおす』高木侃著 講談社現代新書
 「江戸の女性にとって暗黒時代」
 三行半で即、離婚。夫から逃げるには縁切り寺に逃げ込むしか手がない。と教科書には書いてありました。
 でも、真実は違うのです。三行半を突きつけられても「三行半」の受け取りを書かなければ離婚は成立しません。これは規則として決まっていたのです。どんな悪妻でも、離縁したくても相手が「三行半受け取り」を書いてくれなければ離婚は成立しません。そもそも、この時期、ヨーロッパのカトリック系の国では離婚することすら不可能だったのですから。イタリアでは戦後まで離婚は法的に禁止されてました。
 縁切り寺も同様。奥さんが逃げ込む所はいくらでもありました。手っ取り早く逃げるには庄屋さんに逃げ込むのが一番簡単だったようです。詳しくは本書を読んでください。
 確かに武士の世界は大変だったようですけど。人口の大半は他の身分だったのですから、分けないといけません。
 結論として離婚が、やりにくくなったのは明治になってからというのは事実です。

『現代農業1991年9月号臨時増刊江戸時代に見るニッポン型環境保全の源流‐「いま」と「お江戸」を重ねて見れば』牧野昇・大石慎三郎・吉田豊 農文協
 「環境問題」現代日本最大の問題点の一つです。人口3000万人強、江戸の人口が世界最大の100万人の多くの人口を抱えた当時の日本の環境はどうだったのでしょう。答えは、快適な環境だったということです。
 「何故?貧しかっただけじゃないの?」って答えが返ってきそうですけど、この本を読めば答えが判ります。当時も公害や自然破壊がありましたが、今よりもきちんと解決しています。多くの人たちの文章が証明しています。

『現代農業1996年2月号増刊すべては江戸時代に花咲いた‐ニッポン型生活世界の源流』農文社
 「江戸時代は豊かだった」と、この本は断言する。現代の我々の社会文化の基本は江戸時代に出来たと言う。
 読めば納得してしまう「食べる・飲む」「着る」「つきあう」「遊ぶ・詣でる」「まめに暮らす」「運ぶ・送る」「知らせる・広める」「運搬手段」「生活の道具「食べもの」「薬」の各項目で詳しく解説してくれている。
 あまりに、教科書の歴史観との違いに驚くのは必須?

江戸の悪評の一つとして必ず例に出されるのは「生類憐れみ令」です。人間より動物を大事にする悪法の代表のように言われてきました。でも、その真実は?
『is〔76〕楽しい?愚行』ポーラ文化研究所より「生類憐れみ令の向こう側」山室恭子
を読みましょう。実際に当時の文献を調べてみると生類憐れみ令で死罪になったので確実なのは、たった3人なのです。
それも、見せしめ的要素が強く、実質的にはほとんど役をなしていない法律なのです。
処罰者も確定できたのは36例しかありません。天下の悪法がこの程度なのが江戸時代だということを知っておきましょう。

続いて江戸の悪評は「鎖国」です。鎖国によって現在日本の国際関係の下手さが発生したという極論まであります。そこで
『開かれた鎖国‐長崎出島の人・者・情報』片桐一男著 講談社現代新書
が良い資料となります。
 本当に江戸は「鎖国」していたのでしょうか?完全な鎖国でないことは皆さんご存じの通り長崎の出島を通じて外と開かれていました。少なくともオランダ・李氏朝鮮・中国とは正式な国交を持っていました。
 本書では長崎の出島における巧妙な物流・情報システムを解説することによって極めて巧みな外交を行っていたことを説明してくれます。日本の鎖国は巧みな限定外交だったのです。
 本書では述べていませんが、もし鎖国がなかったらどうなっていたでしょう?
 ここからは、私論ですが、どこかの国の植民地になっていたでしょう。多分、他のアジアの諸国のように。でも、限定的な鎖国により近隣諸国(李氏朝鮮・中国)と友好関係を持ちオランダから欧米の情報と一部の必要な技術を得ることで独立を守っていけたと考えれるのです。だから鎖国害悪論は???という感じです。

 これだけ書けば知らなくてはいけないのが当時の先進地域?ヨーロッパの市民たちの生活を見てみましょう。王家や貴族の生活は割に知られてますけど市民はどうしてたのでしょう。そこでお勧めは、
『十八世紀パリ生活誌‐タブロー・ド・パリ』全2巻 メルシェ著 岩波文庫
 革命前夜のフランスはパリの庶民の生活誌。読んだ感想・・・「汚い」の一言。
 下手な発展途上国のスラムじゃないかと思うほど汚い。汚すぎて革命が起きたのではないかと思いうくらいです。幕末から明治初期に来日した外国人が「日本は清潔」と書く理由がわかりました。
 どのくらい汚いかと言うと、パリより清潔だと言われたロンドンでテムズ川が悪臭がきつすぎて国会が中止になったくらいですから、もっと汚いパリは・・・。その点、江戸の川ではカワウソが泳ぎ、トキが飛んでいたのですから。

これだけ、書いたら私が復古主義者のような感じを受ける方がおられると思いますが違います。
あまりに、歴史で習ったことと真実が違うことを強調したかっただけです。
やっばり、今の方が私にとってはいいです。
ただし、あの時代なら日本が一番いいと思いますけど個人的に。

『江戸の町医者』小野眞考著 新潮選書
 江戸の医療は基本的には東洋医学でした。迷信や祈祷も生きていたし、西欧医学も出島を通じて徐々に入ってきました。
 その当時の江戸の医療の実態を当時の川柳を用いて紹介したのが本著です。
 流行医者・外科医者・女医者・小児医者・目医者・やぶ医者・代脈・取上婆などなど、たっぷり目一杯紹介しています。
 案外、今の医者と変わらないような所もあり川柳なので笑いながら読めます。
 もちろん、庶民の医者に対する厳しい批判の目も笑いの中に光っています。

『大江戸観光』杉浦日向子著 ちくま文庫
 江戸についてのエッセー集。
 江戸時代の楽しさについて筆者が語ってくれています。
 浮世絵・歌舞伎・狐狸妖怪・曲屁・刺青・恋の魔術・化粧法・おしゃれ・美形・江戸本・化粧法・時代考証。
 筆者の江戸への想いが、伝わってきます。変な理屈なんかなしに楽しめる1冊に仕上がっています。
 (01.03.20新規)
『一日江戸人』杉浦日向子著 新潮文庫
 イラスト満載の江戸人案内書。江戸人になりきるための要素を詰め込んであります・・・それは大道芸だった義賊であったり色男・大奥・将軍・長屋の住人・結婚・師走・正月・まじない・江戸見物・食・屋台・相撲・旅・春画などなどテーマ別に解説、イラストの方が情報密度が濃いです。江戸の人達が面白おかしく人生を楽しんでいたことがよく判る1冊です。
 (05.06.16新規)

『世界を見てしまった男たち‐江戸の異郷体験』春名徹著 ちくま文庫
 江戸時代は基本的には鎖国時代でした(中国・オランダ・李氏朝鮮等を除く)。しかし、外国に行ったことがある人はいました。それが漂流し外国船に助けられた人々でした。
 鎖国はしていたとしても海上輸送や漁業で海に出る人は多くいました。中には嵐やしけに巻き込まれて遭難してしまう人々もいました。中には運良く外国船に助けられてしまった人々も、ある程度の数いたのです。
 その人々は始めて異郷の知を踏み見てしまうことになってしまうのです。その苦難と衝撃に満ちた体験を徹底的に資料を洗い出して調べたのがこの作品なのです。
 異郷の地で体験した衝撃、その後帰国した後の衝撃・・・どちらも大変な事なのです。それをこの本は著しているのです。本当に大変です。
 (01.05.13新規)

『歴史文化ライブラリー(33)災害都市江戸と地下室』小沢詠美子著 吉川弘文論
 「江戸っ子は宵越しの金を持たない」とよく言います。火事や地震などの天変地異が多いのが江戸の特徴でした。次の日がどうなるか判らない庶民にとっては次の日の蓄えなどはあてにならなかったのです。逆に天変地異があった後の方が仕事が増えて金回りが良くなったほどです。
 しかし、大きな御店などは、そうは言ってはられません。財産を抱え多くの従業員を抱えてすぐに仕事を再開しなければいけなかったのです。そのためには財産を天変地異から守るために地下室を造っていたのです。通称「穴蔵」とよばれた地下室がどのように発展し、いかに配備されていったかを研究した書物です。
 地味ですが興味深い一冊です。
 (01.09.08新規)

『江戸の性風俗−笑いと情死のエロス』氏家幹人 講談社現代新書
 江戸時代の性はおおらかであったと言われます、特に町人の世界は・・・。
 でも、しきたりの厳しい武家社会ではどうだったのでしょうか?武士は死ぬまでに3回しか笑わないと言われていますが・・・。
 実はとんでもないんです、家族で食事中にエロ話をしていたというのです(何ておおらかなんでしょう)。
 それを残された文献を元に解説してくれます。
 他にも春画や男色についてのお話が載ってますので、面白く読めます。
 (01.12.16新規)

『大江戸視覚革命−十八世紀日本の西洋科学と民衆文化』T・スクリーチ著 田中優子・高山宏訳 作品社
 十八世紀当時、世界一の人口を擁していた大都市江戸では人々は見えない人心、見えない明日に揺らいでいた。
 見えないモノを見せてくれるオランダ渡りの顕微鏡に望遠鏡、そして光からくりは町民哲学と混ぜ合わさって新たな世界を開いていく。
 オランダ渡りの視覚装置を中心に黄表紙本・芝居小屋からの抜粋で江戸世界を読み解く新しい視点。凄まじいまでの引用で読み解いていく作者の力量には思わず感服。伊達に600頁のハードカバーではありません。
 根性を入れて読みましょう・・・。
 (02.02.08新規)

『旧事諮問録‐江戸幕府役人の証言』旧事諮問会編 進士慶幹校注 岩波文庫
 全2巻。
 明治時代中期、すでに江戸は過去の遺物になり真実と虚構が混じり合いはじめていた。そこで元江戸幕府の役人に直接一問一答でインタビューした記録です。
 御小姓頭取・御勘定組頭・評定所留役・大奥・江戸町奉行・外国奉行・代官手代・昌平坂学問所・御庭番(実際にいたんですねぇ)・与力などなど、実際に聞いてみると伝え聞いたこととは大違いと言うことになっています。途中で何度「それは実際とは違います」という言葉が出てくるか・・・明治においても、これですから現代に於いてはどれだけ違うでしょう・・・この本を読んで実感してみましょう。
 (03.01.03新規)

『江戸の道楽』棚橋正博著 講談社選書メチエ
 徳川300年の間は太平でした、その間に武士や町人たちは「道楽」を身につけてしまいました。その事について書かれた一冊。
 園芸・・・壮大な庭を造る大名から朝顔や菊の変種作りに熱を上げる町人。
 釣り・・・隠居から遊女までが太公望気取り。
 学問・・・遊びのはずの学問が、いつしか本物に。
 執筆・・・狂歌から文学まで、趣味から流行作家になれば家計を支える存在にまでに。
と人々の道楽の進歩を4つのテーマに絞って解説、読みやすい作品です。
 (03.09.27新規)
『幕末・維新江戸庶民の楽しみ』青木宏一郎 中公文庫
 幕末・維新の時、大きな出来事が立て続けに起こりました・・・そう、ペルー来航から明治維新まで。その時の武士や維新の志士たちの活躍は数多くの本に残されています。
 では、庶民は・・・。
 幕末、来日した外国人は驚くのです。その庶民のパワーに・・・それもパワーが明治維新という革命に向けられたモノでなく、遊びに向けられたことを。
 各寺のご開帳、見世物、縁日、祭、園芸、花見、寄席、釣り、おかげまいりなどなど江戸の庶民は徹底的に遊んだのであった。それを解説した一冊です。今の日本人もこのパワーを見習わなければならないかも知れません。
 (03.05.31新規)
『江戸娯楽誌』興津要著 講談社学術文庫
 江戸時代の江戸は生活が安定し庶民達の活気にあふれていました、そこには多くの娯楽が存在したのであります。本書では見世物・大道芸・日常の遊び・四季の行楽・信仰をめぐる楽しみの5項目に大きく分類し紹介しています、本書の特長として各々の娯楽にまつわる小咄や川柳が掲載されているのが特長であります(筆者は落語・小咄等に関する著作が多いことで有名な作家)。
 (05.11.23新規)

『百姓の江戸時代』田中圭一著 ちくま新書
 江戸時代を見直すして欲しいと思うのが、ここのテーマです。それにふさわしい一冊です。
 江戸時代は厳しい士農工商の時代だったのでしょうか?百姓は収奪を受けるだけの存在だったのでしょうか?「百姓は生かさず殺さず」だったのでしょうか?この本は明確に否定してくれます。佐渡や越後の古文書を読み解きながら江戸時代の百姓の実状を知らせてくれます。
 百姓が奉行を罷免したことがある事を信じれるでしょうか?武士から百姓へ、百姓から武士へ身分を変えた人がいることを信じれるでしょうか?貨幣経済が農村まで行き届いたことが信じれるでしょうか?・・・全て実在したお話です、文献に残されているのです。
 教科書が教えない江戸時代を教えてくれる一冊です。
 (03.08.30新規)

『倭館‐鎖国時代の日本人町』田代和生著 文春新書
 鎖国をしていた江戸時代も日本は幾つかの国と交流をしていました、その中の一つが李氏朝鮮。そこには江戸時代唯一の幕府公認の日本人町「倭館」があり、常時数百人の日本人が滞在していたのです。そこは朝鮮との外交交渉、貿易などの場所だったのです。しかし、すべてが順調とは行かなかったのです。密貿易に始まり姦通事件、野生の虎の乱入などなど・・・。でも、日本は、そして対馬藩はしたたかに生き抜いたのです。
 知られざる日朝交流史、日朝の文化比較を紹介してくれる良著であります。ただし、最後が尻切れ気味なのが残念。
 (04.05.03新規)

『江戸の色ごと仕置帳』丹野顕著 集英社新書
 江戸時代の裁判記録は大量に残っています、そこから男女間の性的な犯罪・事件に対する裁判と刑罰をまとめた一冊です。
 不義密通・婚前交際も一端、奉行所にかかれば厳しい刑罰が待っておりました(しかし実際に裁判沙汰になるのは珍しいことでもあった)。その奉行所にかかった判例を元にして江戸幕府の裁判制度(特に儒教思想に強い影響を受けていた)を読み解く一冊です。この本では江戸時代の厳罰主義が強調されていますが実際には裁判沙汰にせず当事者で解決したことが多かったことも忘れてはいけません。
 (04.06.07新規)

『新編おらんだ正月』森銑三著 小出昌洋編 岩波文庫
 江戸時代寛永6年11月11日蘭学者達は一つの集まりを催した、それが「おらんだ正月」である、なぜならこの日は太陽暦では元旦に当たるからである・・・という題名は本文の内容とほとんど関係ない。この本の内容は江戸時代に活躍した医者・本草学者・蘭学者・探検家・発明家・思想家を50人以上をひとりひとり紹介した本であります。
 もともとは『子供の科学』に連載されたものなので子供向けの文章になっているので大変判りやすいです。ただし最初に書かれたのが戦前、全面改定したのが戦後すぐなので、その点には留意しなければいけません。
 (04.06.15新規)

『女たちの幕末京都』辻ミチ子著 中公新書
 幕末に活躍したのは維新の志士や攘夷の人々だけではない・・・女性達も歴史に一枚も二枚も加わっているのである。
 「おかげまいり」に始まる江戸末期の混乱は多くの女性にも活躍の場を与えた・・・近衛殿老女村岡、島津篤姫、鉄の女幾嶋、安政の大獄に絡んだ女性達、皇女和宮、松尾多勢子、新撰組に関わった女性、坂本龍馬の妻龍、徳川家に関わった女性、若江薫子などなど・・・。
 今までほとんど表だって紹介されなかった女性達を江戸末期の歴史とともに紹介してくれる良著であります。

『江戸のまんが‐泰平の世のエスプリ』清水勲著 講談社学術文庫
 「日本のマンガ文化の起源は江戸時代に求めることが出来る」と言うのが、この本の論旨です。寄せ絵、文字絵、鳥羽絵、大津絵、北斎漫画、道化絵、百鬼夜行、百面相、草画、子供遊絵、蛸絵、一筆絵、鯰絵・・・次々と出現する笑いとユーモア、皮肉・・・それが泰平の世の中に定着した江戸の漫画です。江戸以前の漫画、幕末から明治にかけての漫画、外国人による研究、江戸まんが年表も掲載・・・図版も多数の1冊です。
 (04.09.15新規)

『江戸のおしゃべり‐川柳にみる男と女』渡辺信一郎著 平凡社新書
 江戸時代に流行った川柳から江戸の人々の風俗を解説する本。幼児・娘・どら息子・新婚夫婦・新妻・嫁と姑・亭主と女房・下女・恋愛・浮気・武士・お金の話・将棋・囲碁などなど・・・。今と変わらないのは「嫁と姑」「亭主と女房」であります。そして面白いのは江戸の人々が江戸に出てきた武士(参勤交代などで)を徹底的に馬鹿にしていること(特に薩摩人)・・・要するに田舎もので物知らずで野暮だと言うことです・・・とってもキツイ皮肉がたっぷり盛り込まれています。後「えっち」な川柳も面白いです(これも時代を超えた存在ですね)。
 (04.09.24新規)

『博徒の幕末維新』高橋敏著 ちくま新書
 博徒と呼ばれるアウトロー達にも幕末維新の動乱は容赦なく襲いかかった。伊豆七島から島抜けを決行した竹井安五郎が成功した理由は黒船来航の混乱であった。他にも勢力富五郎、武州石原村幸次郎、国定忠治、黒駒勝蔵、水野弥三郎が維新に巻き込まれていく様子を古文書を丁寧に読み解いていく労作です。大衆小説や講談・浪曲で語られていたのとは別の実態を見事に語ってくれる1冊であります。
 (04.10.31新規)

『江戸の旅文化』神崎宣武著 岩波新書
 日本人の旅行の特長・・・団体旅行・温泉好き・大量のお土産・旅行ガイドブック・・・それらのルーツは全て江戸時代にあったのです。最も盛んだったのは伊勢参宮・・・みんなにお見送りされて一生に一度の伊勢参りから、「いいじゃないか」や「おかげ参り」まで、それに続く寺社仏閣参り、湯治などなど。道中の出で立ち、携帯品、お金の工面(講の制度)、道中の食事と宴会、旅籠、女性の旅・・・細かく解説してある良い1冊です。
 (04.11.19新規)
『江戸の旅日記‐「徳川啓蒙期」の博物学者たち』ヘルベルト・プルチュウ著 集英社新書
 スイス生まれの作者が江戸時代の旅文化にスポットを当てて研究した結果をまとめた作品。江戸時代中期徳川吉宗の時代になって日本の紀行文学は新しい時代を迎えた、それまでの過去をたどる紀行文学と異なり自らの好奇心で旅に出、それを紀行文としてまとめるようになったのだ。紀行文をまとめる中で多くの発見をし、日本を再発見するきっかけとなったのである。本書では貝原益軒・本居宣長・高山彦九郎・司馬江漢・富本繁太夫・渡辺崋山・松浦武四郎などの紀行文を読みながら江戸時代を見直す作品であります。
 (05.11.15新規)

『増補・幕末百話』篠田鉱造著 岩波文庫
 明治半ば、作者である篠田鉱造は幕末から明治初頭にかけて生きた古老に話を聞いてまとめた、それがこの1冊です。廃刀・散切り・ちょんまげ・武士の商法・お国入りの大騒ぎ・官軍・彰義隊・長屋住まい・歌舞伎役者・お茶壺道中・辻斬り・安政の大地震・辰年の大暴風雨・生首などなど・・・幕末を生きた人々の生の声を蒐集した貴重な証言集であります。口語体に訳されているので、読みやすいです。
 (04.12.07新規)

『大江戸浮世事情』秋山忠彌著 ちくま文庫
 江戸の庶民生活の雑学集であります。
 性愛と結婚・出世術と処世術・幕府と刑罰・文人趣味に流行あり・庶民風俗あれこれ・避けがたき病と老いの6章に分けて書かれています。江戸時代のバイアグラ(死亡事故もあり)・ポルノの宅配・江戸の性転換・江戸のサラリーマン・男色・汚職役人の死刑・江戸のハローワーク・鰻丼・江戸の毛はえ薬・長寿者・喫煙禁止法・トキを食う話・通・独身女性のトラバーユ・憧れの役職町奉行・源氏物語の毀誉褒貶・・・短い文章で江戸の様々な風俗を判りやすく書いてあるので手頃に読める1冊です。
 (04.12.13新規)

『江戸の町は骨だらけ』鈴木理生著 ちくま学芸文庫
 江戸は当時の世界の最大都市でありました、と言うことはもちろんの事ながら大量の死人が発生いたします、その遺体を江戸ではどう処理をしてきたのでしょう・・・それに対する答えが書かれている本であります。現に東京都心で大きな工事をするたびに大量の骨や墓の跡が出てきます。江戸時代、寺と人捨て場は一体でした、しかしながら寺が引っ越しても寺の建物だけ引っ越して骨はそのままだったのです・・・と言うことは、あちこちに記録に残ってない埋葬地が出てくるのであります。数々の文献や資料に基づいて、これらの実態を読み解いております・・・同時に江戸の人々の宗教観・信仰についても詳しい解説が付いている本であります。
 (05.01.12新規)

『安政江戸地震‐災害と政治権力』野口武彦著 ちくま学芸文庫
 維新をさかのぼること12年前、安政2年(1855)10月2日夜半大江戸を揺るがした巨大地震(マグニチュード6.9)が発生した、これが安政地震である。死者は町方で約4000人、武家方で7000人強、損失家屋は14000戸余り、焼失面積2.2平方キロの大震災である。この地震が阪神淡路大震災と酷似していると作者は書く・・・一つは都市直下型地震、もう一つは住んでいる人が「ここには地震が無い」と信じていたことだという。安政地震は江戸の官庁街を直撃し幕府を大混乱に陥れた、また町人街では地区による被害の不均衡があったという(深川・吉原はとりわけひどい損害を負った)。地震前の爛熟した江戸文化、地震後の救護活動と社会不安の抑制のはたらき、そして運命の12年後(干支一回り)に起こった維新への影響を調べ上げた1冊です。
 (04.03.28新規)

『江戸の流刑』小石房子著 平凡社新書
 時代劇のお白砂のシーンでおなじみの台詞「終生、遠島を申しつける」というのがあります、これが流刑であります(島流しです)。この島流しされた人々は何処に流され、流された先でどのような生活をしていたか紹介する本です。罰則であるからには当然のごとく生活は辛いものであり、中には島抜け(脱走)するものもおりました。しかしながら元戦国武将の一族である宇喜多秀家一族のように良い待遇を受けたものもおりました・・・流された島の文化の向上に努めたものもいました。有名人では西郷隆盛も島流しに遭っていたりします。このような流刑の真実を紹介してくれる貴重な1冊であります。

『観光都市江戸の誕生』安藤優一郎著 新潮新書
 江戸時代、江戸の人口は100万を超え参勤交代などで絶えず住人たちは入れ替わっていた。8代将軍吉宗は都市化に伴って減少した憩いの場を提供した。寺社は見世物で参拝客争奪戦を開始し大名はお国自慢の神仏を江戸屋敷に持込み開帳して賽銭などを集めて財政の足しにした。そこには、それぞれの寺社の戦略がありブランド確立に力を尽くした(その例として成田不動を紹介、見事な戦略でブランド確立に成功した→現在でも、そのブランド力は健在である)、大名たちも苦しい財政を補うために必死の努力をしていた、その裏にはトラブルありインチキあり加熱を懸念する幕府あり失敗あり大変な実態であったことが書かれている。100万都市江戸を別の角度から描いた1冊です。
 (05.09.25新規)

『足軽目付犯科帳‐近世酒田湊の事件簿』高橋義夫著 中公新書
 江戸時代、庄内藩酒井家の所領であった酒田湊は蝦夷地や京都・大阪を結ぶ海運の要所であり地方都市として大いに賑わっていた。この酒田湊の平和をつかさどったのが足軽目付であり、彼らの記録が『御用帳』であります。残された『御用帳』から彼らの活躍を解き明かしたのが、この本であります。ありがちな盗難・殺人・詐欺・汚職に始まって見世物見物(見世物が風紀を乱していないかチェックするのも彼らの仕事です)まで、変わり者の出現や出世争い、普段の生活、幕末維新の大騒ぎの記録も残されており当時の下級武士たちの生活、そして庶民の生活がよく判る1冊であります。
 (05.10.05新規)

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