「羅列の美学」って何?
とにかく「たくさん並んでいる事」そして、それが美しい事。
コレクター体質の人にはわかると思います。自分のコレクションをずらりと並べて悦に入る快楽。
それが小説ならば・・・本ならば・・・。
と言うわけで本を選んでみました。
『ゼウスガーデン衰亡記』小林恭二著 福武文庫
うらぶれた遊園地「下高井戸オリンピック遊技場」は双子の天才によって「ゼウスガーデン」として生まれ変わった。ありとあらゆる欲望を満たす快楽の王国となった「ゼウスガーデン」の100年の歴史をたどる小説。
次々と登場する遊園地の快楽装置の羅列をみるがよい。(強気の言い方すみません)
この作者の最も得意とするタイプの小説、私が読んだ中では、この作品が一番。
『電話男』『小説伝』『瓶の中の郷愁‐小説の特異点をめぐるマカロニ法師の巡礼記』も「羅列の美学」の傑作小説であります。
『中二階』ニコルソン・ベーカー著 岸本佐知子訳 白水社uブックス
中二階のオフィスに戻る途中のサラリーマンが巡らす思考の数々。靴ひも・牛乳瓶・ミシン目・耳栓・ストロー等々、よくこれだけ細かい所に気がつく・・・それも、オフィスに戻る間の短い時間に。まさに思考の羅列の美学。
ナノ文学の極地です。
『ヒコーキの心‐フライヤー号からエアバスまで』
『続・ヒコーキの心‐ブレリオ号から極超音速機まで』
『続々・ヒコーキの心‐アントワネット号から最強地上攻撃機まで』
佐貫亦男著 おおば比呂司イラスト 光人社文庫
各巻68機のエッセイ集。飛行機好きにはたまらないエッセイの数々。おおば比呂司のほのぼのとしたイラストも、いい感じ。さすが佐貫亦男といった技術に裏打ちされた飛行機の知識。続編の『飛べヒコーキ』光文社文庫全3巻もあるので全部で何機?。
『FantasticDozen〔9〕極楽の魚たち』荒俣宏編著 リブロボード
まず、本を開けた瞬間その色彩に驚くでしょう。天然色の熱帯水生生物の羅列。
サイケデリックといってもよいような色彩、誇張とデォルメ。しかしこれが写真の無い時代の事典なのです。
原本は『モルッカ諸島産彩色魚類図譜』ルナール著です。その3種類の写本。特に最後の『フォン・ベア写本』の色彩はどうでしょう。すごすぎる!!!。
人魚が載ってるのは当時としては、当たり前?
『明治事物起源』全8巻 石井研堂著 筑摩書房
よくぞ、ここまで調べ上げた!という本。明治時代前後に始まった、ありとあらゆる事物の起源の羅列。
本当にありとあらゆる事物が載っています。「義眼の始め」から「浅草六区の始め」まで(ちなみに、これが連続した項目だったりする)とにかく載ってます。明治の歴史に興味のある人も無い人も一読をお勧めします、ただし旧仮名使いなので読むのは大変ですが・・・
『自殺者たち‐一日一死』稲葉真弓・下川恥史編著 青弓社
最近自殺する人が増えています。不景気・先の見えない世の中・孤独感なとなど・・・。
でも、人が自ら死を選ぶ理由はさまざま。方法もさまざま。
それを、1月1日から12月31日まで毎日毎日、新聞の記事を抜粋して紹介。
ほんと、色々あるんですね・・・中には「幸せ過ぎて」理由なんて人もいて・・・絶句です。
これを美学と分類していいのか悩みましたけど・・・これだけ並べられると・・・選択です。
『戦後ハイジャック全史』稲坂硬一著 グリーンアロー出版社
戦後から1996年8月26日までに起こった1080件のハイジャックの全ての記録。
最初のうちはハイジャック略史ですが、後半の年表は圧巻です。
100ページにわたるリストは、凄いです。
『オルタ・カルチャー』スティーヴン・デイリー&ナサニエル・ワイス共著 吉岡正晴日本語版制作 リブロボード
事典と言うのは羅列が目的の書物である。その本のテーマにそった事象をひたすら解説していくモノである。この本は「オルタ・カルチャー」についての事典である。
「オルタ・カルチャー」・・・日本語に訳すと傍流文化である。保守本流から離れた所で生息する文化たち。時には一気に主流になってしまうことも多いです。本著は、その「オルタ・カルチャー」の事典である。
事典であるから、とにかくアメリカにおける「オルタ・カルチャー」の項目が多数、載っている。日本にとってはなじみのないモノから「ニンテンドウ・サム(ファミコンのやりすぎで腱鞘炎になること)」「マイク・タイソン」まで何を基準にして選んでいるのか不明だが面白い事に間違いはない。但し発売が1997年なので多少古い感覚もする項目もありますのでご注意を。
alt.BOOKS.000『オルタカルチャー日本版』 メディアワークス/主婦の友社
上記の『オルタ・カルチャー』の日本版です。ありとあらゆるオルタ・カルチャーの事象が羅列化されて掲載されています。
「新宿西口」から「新世紀エヴァンゲリオン」、「大麻堂」から「ダウンタウン系」、「電波系」から「TOKYO STYLE」等々、アメリカ版よりは項目が少ないですが内容は濃いです。
でも、結局のところ、どこからがオルタ・カルチャーなのかははっきり判りませんけど・・・。
(01.04.22新規)
『中世なぞなぞ集』鈴木棠三編 岩波文庫
中世の主要な「なぞなぞ集」7種を納めています。昔のなぞなぞは短いです。例をあげてみましょう。
問い「こたつ」答え「からす」(解釈・・・子立つ→後は空の巣→からす)
こんな「なぞなぞ」が数百、掲載されています。読んでると結構面白いです。
今も子供達の間では「なぞなぞ」がはやっているのですが、昔の日本人も「なぞなぞ」好きです。
それよりも、最大の謎は岩波文庫から、この本が出ているということ。でも、岩波文庫出なきゃ出さないとも考えられる。
謎は深まります。
『珍姓奇名』佐久間英著 ハヤカワNF文庫
日本ほど名前の種類が多い国はありません。「名前博士」の異名をとる作者が全国を調べ上げた結果がこの一冊です。
多い苗字に始まって、地域別「苗字」分布、珍しい苗字、数字の入った名前、日付の入った名前、短い名前、長い長い名前、人名になりにくい人名、仮名交じりの姓名、間違えやすい名前・・・とにかく多数書かれています。
ちょっと書かれた時期が古いので(1981年)データが古いところもありますが驚くこと多数です。
(03.06.16新規)
なお、名前については以下の本が本が役立ちます。
『月刊しにか2003年7月号特集「日本人の名前と漢字」』 大修館書店
日本の名前も他の国に例を見ないほど多くあります。苗字が時代で変化をしないのに対して名前は時代の影響を色濃く受けます。その時の世相や流行、話題になった人物に左右されます。
しかし人名に使える漢字は制限されています(常用漢字と人名用漢字)この中で人々は苦労して我が子に名前をつけています。この苦労の結果が各文章に現れております。
注目できるデーターとしては昭和元年から平成14年までの各年の男女名前ランキング・ベストテンが載っていること、そして人名用漢字に追加してほしい漢字アンケート結果(一位は「苺」でした)などなど・・・他にも各執筆者の記事は大変役に立ちます。
(03.07.21新規)
『かがやく日本語の悪態』川崎洋 新潮文庫
日本語で表現された悪態・・・バカ・アホ・間抜け・・・上げていけばいくらでもある。落語・遊里・歌舞伎・芝居・映画・文学・方言・学生言葉から集められた罵詈雑言の限り・・・でも下品なだけじゃない、ユーモアもたっぷり、生命力もたっぷり・・・日本語の底力を感じさせる一冊。
作者の選択眼が光る一冊であります。
(04.07.26新規)