短編の愉しみ
短編の愉しみです。
短くとも面白い小説を紹介したいと思います。
『マンハッタンのドラゴン』フランチェスカ・リア・ブロック著 金原瑞人訳 理論社『“少女神”第9号』収録
マンハッタンに住むタック・バッド、中学生の彼女には二人のお母さんと暮らしている。イジーとアナスターシャである・・・バットはある日、疑問に思った・・・なぜ私には二人のお母さんがいてお父さんがいないのだろう?そこから彼女の父探しが始まる、舞台はサンフランシスコ、ロサンゼルスと転々する。そこで知った彼女の父親の真実は意外なものだった・・・とってもハッピー・エンドな物語です。
(03.12.02新規)
『アインシュタインの夢』アラン・ライトマン著 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫
若き特許局員アインシュタインが空想する不思議な時間空間の30通りの夢を連作していく小説。
時間が巡回する空間、制止する時間、逆流する時間、場所によって流れが違う時間、目に見える時間・・・思いつく限りの奇妙な時間の流れがたたみかけてきます。とっても不思議な読書感であります。
作者は本物の物理学者。短編と言うには少し長い作品ですが短編連作小説と言うことで取り上げました。
(04.03.02新規)
『漱石遺毛』内田百聞著 ちくま文庫『内田百聞集成(6)間抜けの実在に関する文献』収録
夏目漱石の弟子であった内田百聞が大事に保存していた記念品の数々・・・その中には「とんでもないもの」があったのだ。それは「毛」・・・ただの「毛」ではない、「鼻毛」である・・・夏目漱石は鼻毛を抜いて原稿用紙に並べる妙な癖があったのだ。
ユーモアあふれる漱石についてのエッセイ。
(04.06.25新規)
『皮膚と心』太宰治著 ちくま文庫『太宰治全集(3)』収録
太宰治初期の短編です。
人妻の左の乳房の下に小豆粒大の吹き出物が出来た。それを主人に見せると「痒くわないか」とたずねた。でも人妻の心は複雑に揺れ動いた・・・恥ずかしさ・・・かゆさを我慢するのは痛みを耐えるより辛いと・・・皮膚病だけにはなりたくないと・・・夫に連れられて病院に行くまで診察を受けるまで女性の複雑な心理を見事なまでに表現した名作だと思います。
(05.01.09新規)
『一千一秒物語』稲垣足穂著 『稲垣足穂コレクション(1)』ちくま文庫収録
稲垣足穂の代表的連作短編集。月や星・ほうき星・彗星・流星・酒場・ブリキなどなど足穂が好きな言葉がちりばめられている短い短いお話がつなぎ合わさって不思議な風景を映し出す作品です。奇妙だけれども行ってみたい気がする世界観が漂う作品です。
(05.03.28新規)
『神童』谷崎潤一郎著 『潤一郎ラビリンス(III)自画像』中公文庫収録
春之助は小学校では知らぬものがいないほどの神童であった、それは自覚があり本人も認めていた。しかしながら春之助の家は貧乏で中学に通えず親は丁稚奉公に出そうとしていた・・・しかし小学校の校長はそれを聞きつけて「もったいない」と思い、春之助の父の勤め先の御店の書生として引き受けさせ中学校に行かせることになった・・・書生先で感じた神童・春之助の世の中への不満と学問への不満、自分の体と精神の変化にとまどう姿が淡々と書かれていて非常によい作品であります。
(07.02.12新規)
『花伽藍』中山可穂著 新潮文庫
『鶴』『七夕』『花伽藍』『偽アマント』『燦雨』の5作品からなる短編集。各物語の共通点は全て同性愛者の女性が出てくること、しかしながら全てのストーリーのパターンが異なっている。『鶴』は祭太鼓の名手の女性の一夏の熱い恋。『七夕』女性同士の失恋を経験した女性に起こる一夜の出来事。『花伽藍』は別れた亭主が家に転がり込んできたことから始まる物語。『偽アマント』は年下の恋人との出会いと別れを、『燦雨』は老いた2人の女性の不思議な関係と週末を描いています。どの物語も良い作品であります。
(05.07.21新規)
『極短小説』スティーヴ・モス&ジョン・M・ダニエル編/浅倉久志選訳・和田誠イラスト 新潮文庫
たった200字(翻訳前の英語では55語)で綴られた小説集。収録作品は157編。
1987年に米国週刊誌で開始された「55語以内で書かれた短編小説コンテスト」から選び抜かれた作品集であります。短い小説の中に起承転結と意外な結末を詰め込んだもの・・・どの作品も見事としかいいようがない作品ばかりです。それも日本語で200字以内ですので、あっという間に読めるのが良いです。
気軽に読んではいかがでしょうか。
(04.11.17新規)