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自閉症スペクトラム障害(高機能広汎性発達障害;ASD)とは

 自閉症とは, 以下のようなものである.

知的障害を伴う場合が多いが、知的能力(一般的にIQで判断される)が低くない自閉症のことを高機能自閉症と呼ぶことがある。また、知的能力の優劣に関わらず、一部の分野で驚異的な能力を有する場合もあり、その驚異的な能力を有する者をサヴァン症候群と呼ぶ。 なお、「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」、「低機能自閉症」と「カナー症候群」は基本的には同じものであり、臨床的には区別されないことが多い(DSM-W、ICD-10では言語障害がないものをアスペルガー症候群、言語障害があるものを自閉性障害、小児自閉症(カナー症候群)と分類する)。
     [自閉症 - Wikipedia より引用]
 自閉症スペクトラム障害について, いろいろな文献を漁ってて思うのは・・診断基準などを見ていて, それの多数の項目に該当するであろう人物の多いこと. 当然ながら, 一般的な人でこの項目に該当するあるいは思いあたる人がいたとしても, それは大概の場合問題ではなく, 自閉症スペクトラム障害であると判別されるわけではない. まず, はっきりさせておかなければならないのは, 自閉症スペクトラム障害というのは, 脳機能障害を症状とする(発散的思考の困難, 社会的能力等々)が, 心の病などの性質的な問題ではなく, 脳における器質的疾患が原因となっているということだ. したがって, 診断基準として挙げられる条件に該当しうる場合であったとしても, それがすなわち自閉症と判断される根拠になるわけではない. もちろん, 疑わしいということには変わりはないが.

 器質的疾患が原因であるから, 当然だが蓋を開けてみれば分かる. 逆に言えば, 蓋を開けないで判別する場合には, 診断基準と適合しているか否かというブラックボックステストをすることで判断するしかない. しかし, 一般的な人, 例えば, 人付き合いが苦手だとか, 引きこもりがちな人ってのは, かなりのパーセンテージでこの診断基準に該当する人が多いと思う. だからと言って, もちろんその人達がASDだとかそういうわけではないのだが, 最もそれらのなかには, 自閉症であると診断されてはいないものの自閉症であると考えられる人らもいるのだろう. ようは, 言語障害がない, あるいはほとんど知的障害の見られない自閉症患者(アスペルガー症候群)など, そういう方の中には, ほとんど社会的生活を送るのに不自由しないため(ただし、やはりさまざまな障害はあるらしいが), 診断などを受けておらず, 明らかにはなっていないという人もいるんだろう.

 さて, 話が脱線したが, ASDがなぜ起こるのか, その原因として以下のようなものが考えられている. それは, 自閉症スペクトラム障害が起こる原因として, 最近の有力な仮説として, ミラーニューロン仮説と突出風景理論というものがある. 上側頭溝(STS), 下前頂小葉(IPL), 下前頭回(IFG)などにミラーニューロンと呼ばれる特定の行為をコードしているテンプレートともいえるニューロン群があり, 人が何も考えずに基本的な行動を実行したり, あるいは他者の行為をいろいろと推論することなく即座にその行為の意味を理解できるのは, ミラーニューロンというテンプレートがあり, その雛型に対してパターンマッチングしているからと考えられている. 他者の(単純な)行動の推測, 意図の把握, 他者との共感, 学習などにはこのミラーニューロンは深く関係しているらしいのだ. 自閉症スペクトラム障害の患者は, 下前頭回や前帯状皮質などのミラーニューロンにおける機能障害が見られるらしい. その結果, 社会性の障害, 他者とのコミュニケーションの困難性が生じていると考えらている. このように, ミラーニューロンは他者とのコミュニケーションに関する重大な役割を果たしており, また, 「心」と呼ばれるシステムの根本的なメカニズムを担っていると考えられる.

 また, ASDに関する話で有名な, 「サリーとアンの実験」とか「サリーとアンの課題」とかいうものがあり, これは, 以下のようなものである.

1. サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいました。
2. サリーはボールを、かごの中に入れて部屋を出て行きました。
3. サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移しました。
4. サリーが部屋に戻ってきました。
5. 「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すでしょう?」と被験者に質問する。

正解は「かごの中」だが、心の理論の発達が遅れている場合は、「箱」と答える。
     [心の理論 - Wikipedia より引用]
これは, けっきょくのところ象徴的理解の問題, とくに二重表象の理解の問題であると思われる. ようは, 話を聞いてそれを表象する(一次的表象)のに対して, その話のなかにおける登場人物の状況を考えて, その人物がどう考えるかを想像する(二次的表象). 二重表象の理解は, 前頭皮質の髄鞘形成による発達に伴い, 4歳児ころにはだいたい可能となり象徴的思考ができるようになる. しかし, ASD患者の場合はそれが困難となってしまっているのではないだろうか. この, 他人の精神状態を推理する能力が欠けているのは, 例えば, 左中側前頭前野の異常, 下前頭回(IFG)の機能異常による運動の誘導および意図の評価の機能に欠損があるなどが考えられる.

 次に, アスペルガー症候群について考えたい. アスペルガー症候群とは発達障害の一種であるが, 社交性(対人関係), 他人の気持ちや言動に対する推測などの困難性が生じたり, 特定事物に対する執着, 運動機能の軽度の障害が見られる. 低機能自閉症(カナー症候群)とは違い, 言語障害や知的障害が(一般的には)発生しない. DSM-IVでは、アスペルガー障害と呼ぶ. アスペルガー症候群では, 前頭前野において機能未発達, あるいは軽度の萎縮が見られる. その結果, 社交性, 他者の気持ちを推測する能力など, 答えが1つに定まらない思考, いわゆる発散(離散)的思考の困難性は前頭前野の機能不全によって起こると考えられる.

 機能障害の例から具体的部位を考えると, フィネアス・ゲージは, 前頭連合野, 特に左半球の前頭連合野の外側部や左側の下前頭回眼窩部が大きく損傷したことによりプランニングの能力を失った. このことは, プランニングや推論という思考は主に上記部位によって発現されると考えられる. また, 前頭連合野の腹内側部における障害としては, 発散的思考の障害が挙げられる. これは, 答えが一義的に決まるような収束型の思考はできるが, 答えが一つに定まらず論理ではなく感情や知識に拠る総合的判断に依存した直感的な判断, いわゆる「ヒューリスティック」な思考を必要とされるときそれを処理することができないということである. このことから, ヒューリスティックな思考においては,前頭連合野腹内側部, つまりは前頭連合野下面の前頭眼窩部(BA10,11,12,47)を中心に前頭連合野内側前部(BA10)の一部を含む領域が重要部位であると考えられる. 以上のことを考えれば, (私見ではあるが)アスペルガー症候群においては上記部位の機能障害によって生じているのだろうと推測される.

参考文献
[1] 脳から見た心の世界part3 日経サイエンス編集部 編 日経サイエンス(2007/12/10)
[2] 脳から見た心の世界part2 日経サイエンス編集部 編 日経サイエンス(200612/13)
[3] 自閉症 - Wikipedia
[4] 心の理論 - Wikipedia
[5] 高機能広汎性発達障害(自閉症スペクトル)