≪ウォームビズ≫
残暑が過ぎて、秋の気配が増してきた。この夏流行したクールビズで味を占めたアパレル業界が、こんどは「ウォームビズ゙」だと張り切っている。冷暖房を節約すれば二酸化炭素の排出量が減り、
地球の温暖化防止に貢献する。冬物の売れ行きが伸びれば経済も活性化する、と「一石二鳥」<kill two birds with one stone>の論法であるー。
造語の「ウォームビズ」は、英語で書くとすれば<warmbiz、←warm business>だ。<warm>の語源は
古英語の<wearm>(暖かい)で、「気候、体温、物が適度な熱さを保って暖かい/温かい」ことが一般的語義。但し、日本語の「暖かい」に比べると「やや暑い」ところまで意味の拡がりがあり、<very
warm>は<hot>と同じ意味になる。<warm supporter>は「熱烈な支持者」、<warm temper>は「かっとなる性格」をいう。衣料品業界が熱くなるのも無理はない。
英語の<warm>は、意外な用法だが、隠れん坊や宝探しで「(人が)目標に近づいている」という意味にも使われる。<You are
getting warm. >は「もう少しで見つかるよ」ということ。狩猟用語の「動物の残した臭いがまだ温かい/生々しい」からきている。ゲームやクイズで、「もう一息、正解まであと一歩」という場面で使える。<My
teacher said my answer was wrong, but it was warm.>は「ボクの答えは間違いだけど惜しいところまでいってる、と先生がおっしゃった」。反対語の<cold>にも、「見当はずれの、正解から遠い」の意味がある。
漢字の「暖」と「温」の字源をみる。「暖」は<日+爰)で、<爰(かん)>は「亘(かん)」に通じ 「わたる」の意。「日がわたって、あたたかい」の意味を表わす。「温」は、右側の部分が、皿の上にフタをかぶせて中の熱を閉じ込めておく意味。これに<水(さんずい)>を加えて、「水蒸気が中にこもり、程よくあたたかい」が原義という。二つの漢字の使い分けは、「暖」は「寒」の対語に、「温」は「冷」の対語に用いるのが一般的だ。
和語の「あたたか」は、複数の語源説がある中で、「アツ(熱)」の音転で「アツアツ⇒アタアタ⇒アタアタカ⇒アタタカ」とする説が分かりやすい。時代が下るにつれて比喩的な意味が加わり、「心が温かい(温和)」、「懐具合が暖かい(余裕がある)」などと使われるようになった。
関西地方では、「〈温度が〉ぬくい(温い)」を多用する。「ぬくぬく」は「暖かいさま、ほかほか」であり、「ぬくぬくと(苦労もなく)育つ」の用法がある。「〈コタツで〉ぬくもる」や「ぬくもり」には、寒さを和らげてくれる優しい語感がある。但し、兄弟語である「ぬるい」は、「温度が不十分、なまあたたかい」で、適温から外れた不快な温度感になってしまう。
日本語の「レッグ・ウォーマー」、「ウォーミングアップ」、「ウォームアップ」は、和製英語と思ってしまうが、どれも本当の英語である(<leg
warmers、warming-up、warm-up>)。<warm-up>には、テレビスタジオや劇場での「前説」の意味もあり、「本番前に会場の雰囲気を盛り上げておくこと」をいう。車のエンジンを前もって暖めておくことも<warm
up>(暖機運転)というが、同じく運転前の下準備のことてある。
「暖」の字を使った熟語に「暖流、暖簾、暖衣」等がある。「暖流」は、熱帯や亜熱帯から上ってくる「暖かい海流」で、英語でも <warm current>である。<current>は「流れ」。日本列島に沿って流れる暖流(「日本海流」)を「黒潮」と呼ぶのは、その濃い藍色に由来する。対義語の「寒流」は<cold
current>。
「暖簾(のれん)]は、屋号などを染め抜いて店先にかけた布。いまは部屋の入口などに吊るして使う。もと禅宗の用語で、寒さを防ぐために禅家の簾(すだれ)と一緒にかけた垂れ幕を中国音で(ノンレン、ノウレン
)と称したのが(のれん)に転じたもの。「信用」の意味にもなった。
「暖衣飽食」は、「暖かい衣服を着て、腹いっぱい食べること⇒ぜいたくな暮らし」を表わし、もちろんエアコンなどなかった時代からの表現。日本はすでに飽食の時代、その上に「ウォームビズ」とくれば、
文字通りの「暖衣飽食」である。この冬は、暖房を落として、厚着をし(英語では <wrap up warm>という)、環境問題を「肌身で感じる」良い機会になりそうだー。